方針転換

先日、当山墓地の件で方針転換をする事にした。

当山墓地は30年前、氷室村墓地に隣接する土地を購入し新規造成された。当初、先代住職は檀家を増やす目的で日蓮宗の方のみに墓地永代使用権(当山に墓碑を建立出来る権利)を与えていた。しかし、墓地完成後、当時の檀家は墓地永代使用権を求め、当初の目的は達成したものの、その後、墓地永代使用権を求める方が無く、総代との協議の結果、墓地永代使用権を与える区画を限定し、宗派問わずに墓地永代使用権を与える事になった。その後、現在に至迄、日蓮宗の方は少なく、他宗が占める割合が圧倒的に多くなった。時代の流れで、墓地永代使用権を得て墓碑を建立しようと考えている施主は、寺所有の墓地と業者が経営する墓地の違いについて考慮する事なく、どちらも同じ墓地という認識である。寺が所有する寺墓地は、その寺の宗教法人が取り消されて無くならない限り存続する。しかし、業者が経営する墓地は、縁故、活動していない宗教法人を買取ったりし、宗教法人の名義を借りて造成し、その後業者が管理運営している。流れを知ると業者が倒産した場合、果たして、名義貸しした宗教法人が管理運営出来るのか? 甚だ疑問である。

時代の流れで、相手方個人の考えを優先し他宗の方の墓地永代使用権を認めて来たが、方針を転換する時期に来たと感じる。日蓮宗の場合、墓碑正面にお題目(南無妙法蓮華経)を刻む場合が多い。これは単なる墓標では無く、その家の宝塔を建立した事になる。

是中皆応 起塔供養 所以者何 当知是処 即是道場

~是の中に皆塔を起てて供養すべし 所以は何ん 当に知るべし 是の処は即ち是れ道場なり~
『如来神力品第二十一』

他宗の方であっても、当山と縁を持ち、お付き合いが始まった中で法華経への信仰が芽生える方がおいでに成るかという期待があったが、結果的にそれは皆無であった。一度、お彼岸法要の案内を出したが「寺が檀家に成れといって来た」と、石屋を通じて耳にした。時代は三離れ(葬儀・寺・僧侶)に入り、墓地に対する考えも大きく変化した。逆に時代がそうであれば、当山としてもはっきりとした意思を現し、檀家として縁を結んで頂く方向性を示す事で、法華経の素晴らしさを伝え、先代住職の考えに立返り法華経を信仰する方を増やす努力をしたい。